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厚生労働省が発表している年金の世代間格差とは?
年金は世代間格差があるから、今の高齢者と若い世代では支給額が大きく異なり、払うだけ損をすると考える人も多いでしょう。
確かに年金の世代間格差はかなり大きく、その現状を知ってしまうと年金制度に不満を抱える人もいるでしょう。
まず厚生労働省は発表している年金の世代間格差の現状と将来の試算をしたのがこの表です。
厚生年金の部分だけ抽出すると、
出生年度 | 保険料 (万円) |
給付額 (万円) |
倍率 |
1945年生まれ | 1,000 | 5,200 | 5.1倍 |
1950年生まれ | 1,100 | 4,600 | 4.1倍 |
1955年生まれ | 1,400 | 4,600 | 3.4倍 |
1960年生まれ | 1,700 | 4,800 | 2.9倍 |
1965年生まれ | 2,000 | 5,300 | 2.7倍 |
1970年生まれ | 2,300 | 5,700 | 2.5倍 |
1975年生まれ | 2,600 | 6,200 | 2.3倍 |
1980年生まれ | 3,000 | 6,800 | 2.3倍 |
1985年生まれ | 3,300 | 7,500 | 2.3倍 |
1990年生まれ | 3,700 | 8,300 | 2.2倍 |
1995年生まれ | 4,100 | 9,200 | 2.3倍 |
こうやって一覧表にまとめてみると、
世代間格差
- 1945年生まれ→5.1倍
- 1975年以降→2.3倍
という感じで世代間格差は2倍もあることがわかりますので、損した気分になるのも当然でしょう。
国民年金もほぼ同様の倍率で推移していますので、1975年以降生まれだと誰もがほぼ同様の給付水準であるということ。
これだけで説明が終われば、年金制度に不満を持たない人はいないでしょうし、もう払いたくないと思うのも当然のことですが、年金制度には世代間格差以外にも注目すべきものがあります。
年金の世代間格差を冷静に考える2つのポイントは?
1980年生まれだと支払った年金額に対して2.3倍しかもらえず、1945年生まれの両親世代の半分以下だから損している。
もちろんその考え方は否定できませんし、年金制度自体が高齢化社会を通じて変化している証拠なので致し方ない部分です。
でも世代間格差を考える際にこれだけは事前に理解しておいて欲しいポイントが2つあります。
年金制度のポイント
ポイント
- 私的扶養の社会化の考慮
- 公的年金の保険機能
実際にどのようなことなのかをより詳しく解説しますので、世代間格差があるから年金を支払うのは無駄なのか冷静に考えてみてください。
年金制度がなくなると現役世代がいちばん困る
年金制度には私的扶養の社会化という側面があるという話をしましたが、年金制度がない頃はどのような仕組みだったのかを考えてみてください。
自分の両親の老後は子供たちで協力して面倒を見る。
そんな考え方が一般的だったので、兄弟で協力して両親の老後の生活を支えている私的扶養が行われていました。
年金制度の導入は私的扶養の負担を減らし、現役世代が高齢者の面倒を見ることで発展してきた経緯があります。
社会全体で高齢者の面倒を見ることで、兄弟の数や家族構成の影響を受けずに老後の生活を安定させることができていますよね?
両親と離れた場所に住むこともできますし、子供がいない世帯でも老後の生活を年金制度が支えてくれます。
仮に年金制度が破綻すれば、両親の面倒をみるのは現役世代の役目。
年金が破綻すると
- 住むところも選べない
- 親への仕送りも必要
- 介護や介助が必要
現役世代のライフスタイルは一変し、親の経済状況の影響を受ける非常に大変な状況になります。
地方に両親を残して、都心部で今の仕事ができなくなったり、現在の生活水準を維持することも厳しくなるでしょう。
年金制度には私的扶養の社会化という側面があることで、両親の老後の生活にかかる費用や責任を軽減できています。
両親世代と現役世代が経済的に自立できる関係性があるからこそ、適切な親子関係を維持できますし、余計なストレスを感じずに生活することができていると考えることもできるでしょう。
年金には保健機能があるので安心して生活できる
年金制度は世代間格差があることが問題だという人でも、この保健機能について理解することで考え方が変わるかもしれません。
年金制度とは
- 老齢年金:長生きに備える
- 障害年金:障害になったら受給できる
- 遺族年金:家族がなくなった時に受給できる
ほとんどの人が意識していない予測できない大きなリスクに対する保障を年金制度が担っているという部分もあります。
もしかしたらあなたはすでに民間の死亡保険や個人年金保険などに加入しているかもしれませんが、全く加入していない人もいます。
予想しない事態に陥った時でも、民間の保険に入っていないあなたや残された家族の生活を保障してくれるのも年金の役目。
年金制度がセーフティーネットであるというのは、こういった不測の事態に対応できるように、全国民に加入を義務付けているから。
もし子供が生まれたばかりのあなたの兄弟が急に亡くなったら、残された家族はどのように生活すればよいのでしょうか?
あなたや両親が生活費を負担して、子供が成人するまで支えるのも難しいですし、そういった気持ちで接するのもストレスになりますよね。
しかし年金制度があることで遺族年金を給付しながら生活を立て直すことができるので、人間関係を悪化させないという側面もあります。
年金制度を世代間格差だけで考えてしまうと、こういったことを見逃しがちになるので、見えない部分を意識することも大切ですよ。
年金の世代間格差は不公平なのかの記事まとめ
この記事では世代間格差があることで年金制度は若い世代にとって、不満や不公平を感じるのはどうなのかということを解説してきました。
確かに世代間格差は存在しますので、そこだけに注目してしまえば、現在の年金制度は不満だらけのものになるでしょう。
しかし年金制度には、
- 私的扶養を社会化していることで選択肢が増える
- 公的年金の保険機能が万が一のリスクを抑制している
このような側面もあり、両親世代と若者世代がそれぞれ経済的に自立できるような機能もあるので、それが良好な人間関係を作る礎にもなっています。
受給額という視点だけで考えるのではなく、もっと広い視点で年金制度を理解することで、意味のあるものだということがわかるでしょう。
30代の年金の受給倍率は2.3倍と低いですが、国が保障する安全な投資案件だと考えると、少しは年金の魅力が高まるかもしれません。
しかしそれだけでは不十分だからこそ、今のうちから私的年金も考えて言う必要がありますし、お金に関する知識や考え方を見直すことが必要だと思いますよ。