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高齢者が働くことで様々なメリットがある
少し前の日本では定年まで同じ会社に勤務し60歳で定年して、その後は年金で老後を過ごすというライフスタイルが一般的でした。
しかし年金制度だけではなく、日本人が全体的に高齢化していることで、60歳で定年した後の残りの人生が数年ではなく20〜30年という時代になっていることで、様々な状況は変わっています。
現在の年金制度では、老後2000万円問題という言葉に代表されるように生活の全てを年金だけでまかない続けることが難しくなっています。
年金収入だけで生活するのが難しい現状において、高齢者でも働くことで収入を増やすというのは非常にメリットがあることでしょう。
高齢者労働のメリットは、
- 年金以外の収入を得られる
- 社会とのつながりを維持できる
- ボケ予防や健康の維持に役立つ
- 各種給付金の支給対象になる
- 将来的な年金受給額が増える
- 年金積立金や収支にプラスになる
というようなことも考えられますので、65歳で定年になってすぐに隠居するというのは現代の日本においては、すでになくなっている概念かもしれません。
高齢期でも働きたいという人が増えている
日本の高齢者雇用安定法で定める定年退職の年齢は60歳以上となっており、原則として65歳までは希望者全員を雇用することが企業に求められています。
60歳で定年になってしまうと、年金支給までの数年間は収入がなくなってしまうことも考えられるので、できるだけ長く働きたいと考えるのでしょう。
出典:平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果内閣府
これは平成26年に行われた内閣府の調査で、就労希望年齢について60歳以上の男女を対象に行われたもの。
65歳位までというのは地方都市の方が割合が高く、大都市圏になると65歳定年という概念を持つ人が少ない傾向があります。
さらに男性の2割は70歳くらいまで働きたいと考えていたり、「働けるうちはいつまでも」と考える人が男性は28.8%、女性は28.9%で最も高くなっていることからも、高齢者側の意識も変わっていることが確認できるでしょう。
労働状況で見ても雇用者で70歳、自営業者は働けるうちはいつまでもと考える傾向が強くなっています。
高齢者自信も年金収入だけでは、家計に余裕がないことがわかっているのでそれを改善したり、さらなる長生きリスクに対応するためにできるだけ長く働こうと考えているようです。
健康寿命と平均寿命の違いから考える高齢者の労働は?
健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活が一切制限されることなく、自立して生活できる期間のことを指しており、最近は平均寿命と比較して考えられるようになってきました。
高齢者労働が増えることは、健康寿命が長くなることも必要なことですので、現在の健康寿命がどうなっているのかを紹介すると・・・
日本人の健康寿命を見ると2016年の段階で、男性が72.14歳、女性が74.79歳と男女ともに2013年の調査時よりも長くなっていますので、多くの人が問題なく70歳まで働けるような環境に変化しているということでしょう。
このように右肩上がりでぐんぐん伸びていますので、健康的な話をすれば今すぐに70歳定年制に移行しても問題がない状態であるということ。
ただまだ65歳からの年金受給に完全移行が完了していませんし、現在の年金受給直前の世代が全員そう考えているわけではないので、すぐには難しいでしょう。
ただ将来的にそれだけ高齢者労働の健康状態に余裕があるということを理解できる指標ひとつとして考えると良いと思います。
年金問題と高齢者の雇用はセットで考えるべき!
年金制度を制定した当時の日本人の平均寿命は、男性が65.32歳で女性は70.19歳でしたが、2017年には男性が81.09歳で女性が87.26歳とわずか60年弱の間に15歳以上も長くなりました。
このままでは日本の年金制度が破綻する可能性が高まるということで、1994年と2000年に法改正を行い、年金の受給年齢が60歳から65歳に段階的に引き上げられることが決定しています。
男性は2025年、女性は2030年になると完全に65歳からの年金支給に移行が完了しますので覚えておきましょう。
先ほどもお伝えしましたが、高齢者雇用安定法では65歳までの希望者は全員が働けるようにする環境を会社側が用意しなければなりません。
仮に60歳で定年し年金支給が65歳になっていれば、5年間は無収入で過ごす必要が出てくるので、そういったことがないように年金と雇用は政府もセットで考えています。
高齢者雇用安定法では
- 定年の引き上げ
- 継続雇用制度の導入
- 定年制度の廃止
のいずれかを企業側が選択して、60歳からの空白期間が発生しないように注意することが求められています。
2017年には雇用保険法が改正され、65歳以上の高齢者でも「高年齢被保険者」という枠組みで雇用保険の被保険者になることが義務付けられています。
その結果、高年齢求職者給付金という失業手当が拡充されたり、育児や介護に関する休業給付金や教育訓練給付金の対象になっていますので、労働環境も充実するものになりました。
さらなる年金制度の改革も進められている
日本人の健康寿命が伸び、労働環境も改善したことで、年金制度自体への改革も本格的に検討され始めました。
年金受給開始年齢が65歳に完全移行していない現状ですが、70歳まで年金受給開始年齢を引き上げることができないか?
ただ一律で70歳としてしまうことで、年金世代にも戸惑いが出るので、65歳〜70歳までで「繰り上げ・繰り下げ」を選択方式にすることで調整しているようです。
健康な人はできるだけ長く働き、その後にもらえる年金を増やし、早めに欲しい人には、受給額を減らして年金をもらえるようにする。
個人が選択できるようにすることで、不満や不安を解消する形が検討されています。
しかし年金が70歳からとなれば多くの人が反発するかもしれませんが、海外では67歳から年金受給が開始される国もあるので、そういった事例も踏まえて実施あのどうするのかがさらに検討されるのでしょう。
年金制度は老後の生活の全てを担うものから、年をとってからの長生きリスクに備える保険という意識改革も主導で進められていくと思いますので、そういったことも理解する必要があると思います。
高齢者労働と年金問題の記事まとめ
この記事では65歳で現役引退という概念はなくなりつつあるということを、様々な視点から説明してきました。
高齢者の雇用と年金の関係性
- 60歳以上の意識の変化
- 高齢者雇用安定法による環境の変化
- 平均寿命や健康寿命から考える高齢者労働
- 高齢者の雇用と年金の現状
日本でも65歳ですぐに現役引退して、隠居生活をすることが一般的な環境ではなくなりつつあります。
特に年金だけで生活する高齢者が困窮している現状もあるので、できるだけ長く働きたいと年金をもらう世代も考え始めています。
ただ60代になって急にそういう状況に対応することは難しいと思いますので、できるだけ早いうちに将来設計を行うべきですし、労働収入と公的年金以外の老後の生活基盤を整えることも大切でしょう。
30代ならまだ30年以上も先の話ですから、中長期的な視点で複利効果の期待できる方法で、私的年金を用意するのがよいと思いますよ。