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年金制度は国が支えるセーフティーネットだからなくならない!
日本に年金制度があるのは、日本国憲法の25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と書かれているから。
25条には他にも「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と国が積極的に国民生活をサポートすべきだという記載もあります。
年金とはセーフティーネットであり、最低限度の生活を営む権利を行使するために、国と個人が協力して行くべきだということ。
セーフティーネットがなくなるのは、国が崩壊するタイミングですので、日本としても簡単に年金を破綻させることができませんし、破綻しないように調整して、年金制度を少しでも長く運用できるように制度の見直しを行っています。
ただ問題なのが、日本国憲法を制定したのが1959年(昭和34年)で、憲法制定時と現在の日本人の置かれている環境が大きく異なるということ。
年金制度の開始時と現在の平均寿命のズレが根底にある問題のひとつ
日本国憲法が制定された当時の平均寿命や出生率、高齢化率は
1960年の日本人は
- 男性:65.32歳
- 女性:70.19歳
- 出生率:2.00人
- 高齢化率:5.7%
2017年の日本人は
- 男性:81.09歳
- 女性:87.26歳
- 出生率:1.43人
- 高齢化率:27.7%
年金制度が制定されてからの約60年間で、日本人の平均寿命も出生率も高齢化率も大きく変わっています。
出典:平均寿命の推移 内閣府
これは内閣府が発表している平均寿命の推移予想であり、2050年には女性の平均寿命が90歳を超える予想が出ているなど、激変していることがわかると思います。
年金制度が始まる少し前の昭和22年の統計データでは男女ともに50歳代だったので、そこから考えてもここまで急激な伸びを予想できなかったのでしょう。
年金が崩壊すると言われるのがこのような環境の変化が根底にあり、それを踏まえた抜本的な年金制度の改革を日本政府が行ってこなかったから。
不安なことも多い年金制度ですが、セーフティーネットであることを考えると、このまま破綻することは絶対にありません。
年金制度は破綻しないけど今のままではなくなる!
日本で年金制度が破綻しないと考えられる理由はいくつかありますが、根底にあるのは年金は金融商品ではなく、国は管理するセーフティーネットであるということ。
何度も言っていますが、年金制度はセーフティーネットです。
セーフティーネットが崩壊すれば、日本人全体の生活を根底から支える仕組みがなくなるので、今のベネズエラのような全国民が貧困状態であるような状況になるでしょう。
ちなみにベネズエラの物価上昇率は、2019年1月で268万%で来年には1,000万%になるという予想が国際通貨基金(IMF)によって出されているので、日本でも年金制度が崩壊する時には、このような劣悪な状況になるでしょう。
少し話がそれましたが、年金制度が破綻しない理由は
年金制度のポイント
- 年金制度は外部環境の変化に合わせて見直ししている
- 適切な見直しができるように定期的に検証作業も実施
- これまでの年金積立金がかなり残っている
このような理由から年金制度は急に破綻することはなく、年金崩壊は起こり得ないことで、徐々に形を変えてソフトランディングしていくという予想ができます。
ここからはそれぞれの項目について、さらに詳しく解説していきたいと思います。
年金制度は外部環境の変化に合わせて見直ししている
日本政府は抜本的な年金制度の改革は行っていませんが、これまでには何度も外部環境の変化(物価上昇率や賃金、人口構造の変化)に対応できるように改革を行っています。
年金の受給年齢を上げたり、受給開始年齢で年金額を増減したりするなど、年金がもらえなくなったというニュースが流れますよね。
まさにそれが年金制度の外部環境の変化による見直しの影響で、受給額や年齢を変化させることで、少しでも年金制度が長く持続できるように考えられているということ。
ただ抜本的な仕組みである労働世代が高齢者を支えるという部分の見直しが先延ばしされているので、高齢者を支える若者世代の負担が増えてしまっていますし、その状況が大きく変わることはないでしょう。
これまでは年金を支払っていれば、老後の豊かな生活が保証されるものでしたが、これから年金を考える際には長生きするリスクに対するセーフティーネットだと考えるべきかもしれません。
だから年金だけで老後の生活を賄うと考えていると、先日の厚生労働省が発表した、老後2,000万円問題のようなことに直面してしまいます。
どれだけ年金を見直ししても、外部環境がそれ以上に激変しているのなら、年金制度は現状とは大きく乖離するものになるでしょう。
そういったことも理解しておくことが必要かもしれません。
適切な見直しができるように定期的に検証作業を実施している
日本政府としてもセーフティーネットである年金制度は絶対に破綻させるわけには行きませんので、見直していることが現状に合っているのかを確認する検証作業も並行して行っています。
上記は厚生労働省が数年に一度行っている「財政検証結果レポートの平成26年版」にある検証データです。
現在すでに生まれている人が死ぬまでの期間を100年間と仮定し、その間に年金制度が破綻しないようにするにどうするべきかということを数年ごとに検証しています。
このように現状のルールで年金が破綻しないかということを、5年毎に100年のスパンで検証していますので、見直しが誤っていればこの検証データの結果を踏まえて、さらに調整されるということ。
さらに平成26年度の資産ではオプション試算も同時に行われ
オプション試算
- 物価や賃金の伸びが低い場合でもマクロ経済スライドがフルに発動するように仕組みを見直した場合、
- 被用者年金の更なる適用拡大を行った場合、
- 保険料拠出期間の延長や受給開始年齢の繰り下げを行った場合
という3つの試算も追加して行っていることで、年金制度が意図せぬ破綻をおこなさないようにしっかり考えられています。
これまでの年金積立金がかなり残っている
年金は破綻すると言われていますが、これまでの年金積立金の中で年金給付に利用されなかったものがかなりの金額残っています。
年金積立金
2016年時点で185.8兆円
2016年の年金給付金は51.7兆円なので、1円も年金徴収できなくても3年以上は現状のままの年金給付を行うことができるということ。
日本の年金積立金額は世界でも有数で、ここまで高額な年金積立金を持っている国は少ないと言われています。
だから外部環境が激変しても今すぐに年金制度が破綻するという事にならずに、ソフトランディングさせる形で給付することができます。
日本の年金構造は2階建てとも3階建てとも言われますので、通常の企業活動を行える状況であれば、年金が徴収されないということはおこりませんよね。
いくら高額な年金積立金があっても、これまでのように年金だけで老後の生活ができる時代ではなくなるでしょう。
そのことを理解した上で、年金+αという老後資産を今のうちから蓄積していくことが必要です。
日本政府主体のセーフティーネットである年金はこれまでの年金積立金もあることで、セーフティーネットとしての価値を発揮していくでしょう。
年金は破綻するのかの記事まとめ
この記事では年金が破綻するのかということに関して、日本政府が年金をどう考えているのか、セーフティーネットという役割を担っていることなどについて簡単に説明してきました。
年金を投資商品と考えれば、徴収額に対する世代間格差に不満を覚えることもあるでしょうし、年金の破綻リスクが気になることもあるでしょう。
しかし年金制度は日本国憲法にも明記されている、セーフティーネットだと考えることで、年金に対する考え方が変わるかもしれません。
日本政府も年金の破綻を防ぐために
- 年金制度は外部環境の変化に合わせて見直ししている
- 適切な見直しができるように定期的に検証作業も実施
- これまでの年金積立金がかなり残っている
これらの取り組みを行っていますが、それ以上に急激な外部環境の変化が起こっていますので、これまでのように年金だけで老後の生活の全てを支えるという考え方は避けるべきでしょう。
30代ならまだまだ公的年金+αの資産形成ができますし、私的年金を今から準備することで、豊かな老後を過ごすこともできます。
年金はあなたの将来だけではなく、私的な不要を公的に行っている国民全体のセーフティーネットだと理解して、今後も支払い続けてくださいね。